食物アレルギー
(Food Allergy)

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食物は、私たち人間を含むすべての動物にとって生きていくために欠かせないものです。食物は私たちの体とは異なる物ですが、食物を異物として排除してしまうと、生命活動の維持が困難になります。このため動物の体には食物を異物として認識しない仕組みが本来備わっています。この仕組みが働かなくなり食物に対して過剰な免疫反応を生じるのが食物アレルギーです。

(1)症状

食物アレルギーでは、食物に触れたり食べたりした後に、皮膚のかゆみ、じんま疹、咳、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、腹痛、嘔吐、下痢、呼吸困難、意識消失、ショックなど様々な症状を発症します。食物の摂取からアレルギー反応が起きるまでの時間は2時間以内であることが多い一方、食物の摂取半日後から翌日にアレルギー症状がでるものも知られています。複数の臓器の症状が出るものをアナフィラキシーといいます。意識がもうろうとする、呼吸が苦しくなるなどの症状があるときは、最重症型であるアナフィラキシーショックが疑われます。特殊なタイプである食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、原因となる食物を食べるだけではアレルギー反応が起こらず、食べた後運動することでアレルギー症状が出ます。給食のあとの休み時間や5時間目の体育で症状が出ることがあり注意が必要です。

(2)原因食物

食物アレルギーの原因食物は鶏卵、牛乳、小麦が60%を占めています。小学生から中学生では果物、えび・かになどの甲殻類アレルギー、木の実類(カシューナッツなどのナッツ類)などが多くなります。

(3)治療

治療の大原則は原因となる食物を食べない触らないことです。誤って原因食物を食べたり触ったりした時には抗アレルギー薬およびステロイドの内服が行われます。アナフィラキシーが疑われる際は、エピネフリン自己注射薬であるエピペン®を筋肉注射します。食物アレルギーの多くは、成長に伴い自然に食べられるようになることが知られています。また、最近では、一部の専門病院でごく少量の原因食物を摂取して免疫をつける経口免疫療法が行われています。





(慶應義塾大学保健管理センター 康井 洋介)


※本内容は「改訂・健康のすすめ―健康な学校生活のために(小・中学生用)― 2023」(一貫教育校小中学校で配布)から引用、一部改変したものです。