マインドフルネス認知療法
(Mindfulness Based Cognitive Therapy)

  • Date:

【定義と歴史】


マインドフルネスとは、「意図的に、今この瞬間に、価値判断することなく注意を注ぐこと」と定義されます。少しわかりにくいかもしれませんが、今おきている外的な出来事や内的な体験(感情や思考、身体感覚など)をありのままにしっかりと認識すること、といったような意味です。

こうしたマインドフルネスの概念を取り入れた治療プログラムが作成され、医療に導入されるようになったのは、1970年代のことです。この治療プログラムは「マインドフルネスストレス低減法」と呼ばれ、当初は慢性疼痛の患者さんなどに実施されていましたが、それほど広く知られることはありませんでした。1990年代になり、「マインドフルネスストレス低減法」と精神療法のひとつである認知行動療法とが統合された「マインドフルネス認知療法」が開発されました。この「マインドフルネス認知療法」のプログラムはうつ病を繰り返す患者さんの再発予防に効果があることが実証され、それ以降、医療の領域で徐々に知られるようになりました。

【プログラムの適応】

「マインドフルネスストレス低減法」や「マインドフルネス認知療法」といったプログラムの適応は、うつ病の再発予防、不安症、がん患者の抑うつ・不安症状などですが、健康な人のストレス低減やウェルビーイングの向上など、様々な疾患や状態に対して効果が実証されています。

【プログラムの中身】

ここでは「マインドフルネス認知療法」について説明します。「マインドフルネス認知療法」は10-20人程度で実施される集団精神療法です。プログラムは毎週1回2時間、合計8回のセッションで構成されています。各セッションには、瞑想の実践やその体験を共有するパートと、認知モデルや行動活性化といった認知行動療法の技法のパートとから構成されています。

瞑想では、最初は、呼吸や身体の特定の場所(例:膝、腰など)に注意を集め、その部分の感覚をありのままに観察する練習から始めます。中盤以降では、観察の対象を、呼吸や身体などから、思考・気分などへと広げていきます。思考や感情を観察するというのは、少しわかりにくいかもしれませんが、マインドフルネスでは、思考や気分も呼吸や身体感覚と同じように、時々刻々と変化する現象(頭の中で起きている現象)としてこれを捉えていきます。このような練習を通して、自分の思考や感情を冷静に客観的に観察するスキルが身につき、ネガティブな思考や気分が生じてもこれに巻き込まれず、冷静な対応を取ることができるようになっていくのです。

【プログラムの効果機序】

このように、自分の思考や気分に巻き込まれず、冷静にこれを観察するスキルのことを「脱中心化」と言います。ネガティブな思考がグルグルとくりかえし頭の中を駆け巡って気分が滅入っても、思考と距離をおいて客観的にありのままにこれを観察できれば、思考に巻き込まれることなく、冷静に対応できるようになります。マインドフルネスによって症状の改善が得られる理由のひとつに、この「脱中心化」があると考えられています。

【瞑想の実践における注意点】

自分で瞑想の実践に取り組むことも可能ですが、瞑想の実施が体調の悪化を招く場合があります。実施の際は主治医に相談の上、指示や許可を得てから実施するようにしてください。慶應義塾大学マインドフルネス&ストレス研究センターのHPに関連する情報がありますので、ご参照ください。


慶應義塾大学マインドフルネス&ストレス研究センター



(慶應義塾大学保健管理センター 佐渡充洋)