感染症<1>
(Infectious disease)

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細菌やウイルス、寄生虫など病原性のある微生物が私たちの体内に侵入して引き起こす病気を感染症といいます。私たちの体はたくさんの微生物と共存しているので、体に微生物が付くだけでは感染症にはなりません。感染症を発病するかどうかは病原体の感染力と体の免疫や抵抗力とのバランスによって決まります。 今回は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症について取り上げます。

(1)インフルエンザ

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症です。A、B、C、D型インフルエンザウイルスのうちAおよびB型が季節性インフルエンザとして流行します。A型インフルエンザウイルスには人間を含む多くの動物が感染し、動物の中でウイルス同士が混ざることによりウイルスの型が変化して毎年流行を引き起こします。数十年に一度ウイルスが大きく変化すると大流行を起こします。最近では2009年に新型インフルエンザの大流行がありました。 インフルエンザウイルスに感染すると、1日から3日の潜伏期間の後に突然の高熱、関節痛、頭痛などの症状を発症します。さらに持病のある人や高齢者、幼い子どもなどでは重症化し亡くなることもあります。 インフルエンザには治療薬(抗インフルエンザ薬)があります。インフルエンザにかかってから2日以内に投与することが勧められています。抗インフルエンザ薬を服用すると主に10歳代の若年者に転落・飛び降りなどの異常行動が起きることがあります。異常行動はインフルエンザ自体でも起こることがあり、少なくとも発熱から2日間は自宅で療養する際にはひとりにしないようにすることが大切です。季節性インフルエンザでは発症後5日を経過しかつ解熱後2日を経過するまでの期間は登校できません。ときに気管支炎、肺炎、喘息発作を伴うこともあり、症状が長引く場合は出席停止期間を超える療養が必要になることもあります。 季節性インフルエンザは学校内で感染した児童生徒から大人へと流行が拡大します。インフルエンザワクチンの接種が重症化予防に有効であることがわかっています。 インフルエンザウイルスには咳やくしゃみなどで排出された飛沫(しぶき)を吸い込むこと、あるいは飛沫が直接粘膜に付着すること、またウイルスの付着した手で目や鼻などの粘膜を触ることにより感染します。インフルエンザの予防のため、咳エチケット、マスクの着用、手洗いをしっかりおこないましょう。

(2)新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症は2019年12月に中国湖北省で報告され、その後世界に拡大しました。感染した人の口や鼻から排出される飛沫を吸い込むこと、あるいは飛沫が直接粘膜に付着すること、またウイルスの付着した手で目や鼻などの粘膜を触ることによりウイルスに感染します。新型コロナウイルスに感染すると、3日前後たってから発熱、咳、咽頭痛などの症状が出現し、症状がよくなっても発症してから10日前後はウイルスを排出します。新型コロナウイルス感染症は子どもでは症状の軽いことが多いものの、持病のある者や高齢者では重症化することがあります。 密閉された空間では感染者から排出された新型コロナウイルスを含む小さな飛沫がしばらく空気中をただよい感染源となります。新型コロナウイルス感染症の予防には適切な換気、マスクの着用、手洗い、ワクチン接種が大切です。新型コロナウイルスワクチンは年齢によって使用できる種類および接種回数が異なります。ワクチンの詳細については厚生労働省のホームページなどを参照してください。





(慶應義塾大学保健管理センター 康井 洋介)


※本内容は「改訂・健康のすすめ―健康な学校生活のために(小・中学生用)― 2023」(一貫教育校小中学校で配布)から引用、一部改変したものです。