HPVワクチン、受けていますか?
( Have you already received the HPV vaccine?)

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 HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン、いわゆる子宮頸がんワクチンの積極的勧奨が再開されてから、はや1年が経過しました。現在日本では、小学校6年生~高校1年生が定期接種の対象となっています。また、1997~2005年度生まれで接種の機会を逃した方は、キャッチアップ接種の対象となり、2025年3月まで公費で接種が受けられます。対象となる方は、HPVワクチン、受けていますか?

<子宮頸がんについて>

 現在日本では、年間約1.1万人が子宮頸がんに罹患し、約2,800人が死亡していると報告されています。若い女性にとって、がんは自分とは関係のないことと感じられるかもしれませんが、子宮頸がんは"マザーキラー"とも称され、20~30歳台の若い方が発症することが問題となっています。これから妊娠・出産をする世代の方々が、この病気のために子宮を失っています。そして子宮頸がんの原因のほとんどは、性交渉によって子宮頸部に感染するウイルス、HPVです。

<HPVについて>

 HPVは実に200種類近くが知られているのですが、中でも子宮頸がんになるリスクが高い型を「ハイリスクHPV」と呼びます。その中でも特にHPV16型と18型は最もリスクが高いと考えられており、感染を予防することが重要となります。HPVは性交渉の経験がある方であれば50~80%が生涯で一度は感染することがあると考えられており、身近にあるウイルスであることが分かります。

<HPVワクチンについて>

 現在HPVワクチンは2価、4価、9価の3種類が販売されており、それぞれ予防できるHPVの型が異なっています。2価ワクチンは上述したハイリスクHPVの16型と18型の2種類を、4価ワクチンは16・18型に加えて尖圭コンジローマの原因である6型と11型の4種類を、そして9価ワクチンはその他のハイリスクHPVである31・33・45・52・58型が加わった9種類のHPVを予防します。HPVワクチンの効果ですが、4価ワクチンを17歳以前に接種すると子宮頸がんの発症を実に88%減少させると報告されています。また17~30歳で受けた場合でも53%の減少効果がありました。一方、副反応については、発熱や接種した部位の痛み・腫れなどがみられることがありますが、重篤な副反応はまれとされています。またHPVワクチン接種後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動等を中心とする「多様な症状」が副反応疑いとして報告されていましたが、その後の調査によりHPVワクチンの接種歴のない方においても同様の症状を呈する方が一定数存在したことが明らかになり、現在ではワクチン接種との因果関係があるという証明はされていません。


 2023年4月からは、いよいよ日本でも9価ワクチンも公費接種で受けられるようになりました。この記事を読んで、自分は接種対象だけど、これまでワクチンについて考えていなかったなと思われている方はいますでしょうか。ご自宅に接種券が郵送されているか確認し、いま一度ワクチンを接種するかどうか、検討されてみてはいかがでしょうか。接種を希望される場合は、定期接種を行っているクリニックを調べてみて、この機会にかかりつけ産婦人科をつくってみるといいかもしれません。
 (なお、2023年4月時点、慶應義塾大学病院の産婦人科ではHPVワクチン接種を行っておりませんので、ご留意ください。)



( 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室  吉浜智子 )