感染症<4>
(Infectious disease)

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細菌やウイルス、寄生虫など病原性のある微生物が私たちの体内に侵入して引き起こす病気を感染症といいます。私たちの体はたくさんの微生物と共存しているので、体に微生物が付くだけでは感染症にはなりません。感染症を発病するかどうかは病原体の感染力と体の免疫や抵抗力とのバランスによって決まります。今回は、性感染症について取り上げます。

性感染症


性行為で感染する病気を性感染症といいます。多くは症状が軽かったり、はっきりした症状のないこともあり、気づかない間に感染してしまったり、長い間放置して症状が重くなることがあります。性感染症は特別な人のみの病気ではありません。だれでもかかる可能性があります。また1回の性行為でも感染することがあります。感染症の種類によっては子どもを産めなかったり、子どもをつくれない体になったり、がんのきっかけになったりします。パートナーのどちらかが異常に気づいた場合は直ちに病院(女性は産婦人科、男性は泌尿器科)にかかりましょう。不安なとき、正しい予防方法が知りたいときには保健所に相談してみてもいいでしょう。どの性感染症も早くに見つけて治療を始めれば治すことができます。そして、二人で同時に治療を受けることが大切です。性行為をコントロールする(性的接触をしない、パートナーを限定する、コンドームを正しく使用するなど)こと、B型肝炎ワクチンや子宮頸がんワクチンのようにワクチンのある感染症では予防接種が予防になります。 最近では若者の間に性感染症が増えています。特に性器クラミジア感染は、最初は症状が無いことも多く、若者に大流行しています。若いうちに感染すると不妊症の原因になります。また、2014年以降、梅毒に感染する若者が急増しています。感染したばかりの頃は粘膜や皮膚の発疹が出ることもありますが、症状がない場合もあります。症状がいったん消えても治ったわけではなく、体の中で気づかず何年も放置すると内臓に広がり、もう治すことができなくなります。妊婦が梅毒にかかるとおなかの赤ちゃんに感染し障害が生じることがあります。 若い女性でかかる子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で生じます。HPVは性行為で感染するので、子どもの時期に子宮頸がんワクチンを受けることがHPV感染予防さらには子宮頸がんの予防に有効です(日本ではHPVワクチンを公費で受けられるのは小学校6年生から高校1年生の女子になります)。 エイズ(ADIS、後天性免疫不全症候群)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染により起こる病気です。HIVは免疫細胞に感染し数年から10年以上の無症状の期間を経て免疫機構が破壊されることでさまざまな病気をおこし、やがて死に至ります。かつてエイズが薬害、人権問題と絡めて大きく取り上げられましたが、現在は性行為による感染が最も多く、性感染症の一つととらえられています。現在では、さまざまな抗HIV薬が開発され、治療の成功率は飛躍的に向上しましたが、完全にHIVを排除することはできません。予防と早期発見・早期治療が大切です。



(慶應義塾大学保健管理センター 河津桃子)

※本内容は「改訂・健康のすすめ―健康な学校生活のために(小・中学生用)― 2023」
(一貫教 育校小中学校で配布)から引用、一部改変したものです。