ストレスチェック検査の課題と今後
(Point at issue and future of 'Stress Check' examination)

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2014年の労働安全衛生法の改正により新たに策定されたストレスチェック制度は、2015年12月1日から50人以上の事業所に検査の実施が義務付けられました。慶應義塾では2016年度の教職員定期健康診断時を利用して行いましたが、第1回目が終わったこの時期に、この制度の課題と今後について述べてみたいと思います。


ストレスチェック検査の目的とは

今回開始となったストレスチェック検査は、ストレスに関連した症状の有無をチェックするために行ったのではなく、あくまでその方の現在のストレス状況の程度をみるものです。言い換えれば、その方自身や職場にストレス状況を気づいていただき、最終的にはその改善につなげるのが目的です。この趣旨を周知徹底させ、全員の納得を得ることが来年度以降も重要となります。

ストレスチェック検査で評価したものは

評価は以下の3つについて行っています。1つは仕事のストレス要因(仕事の量・質、対人関係など)、2つ目は周囲の支援状況、3つ目はストレス反応(自覚症状など)です。そして、最終的には職場ごとの集計を行うことになりますが、初年度は努力義務でした。これは、初回は検査結果に左右され、各職場に混乱を来たす可能性があったためですが、この検査の本来の目的から、早晩絶対的義務になることが予想されています。この職場ごとの集計は、各職場が次年度に向けて改善していくための有用な資料となります。

高ストレス者への対応

今回使用した検査票の質問内容は、受検者の約10%が高ストレス者になるよう作られています。そして、高ストレス者のうち、約10%の方しか面接を申し出ないとされています。慶應義塾では、一地区のみ約10%の高ストレス者を認めましたが、その他の地区では数%とかなり低い割合でした。また、現時点で面接希望の方は全体でも数名程度です。今後、面接を申し出ない高ストレス者にどのように対応するかが、実施上の課題です。

面接指導で何をするか

本来、この検査の結果からは1次予防としての指導が必要となります。すなわち、現在の職場にストレス因子が多いかどうかについての面接となります。その一方で、医療が必要なレベルにある方々を見落とさないこと、すなわち2次予防としての意味合いも含まれます。面接対象者の中で、すでに何らかの症状が強く出ている方に対し、医療機関への受診が必要かどうかの判断も当然しなければなりません。

事後措置について

1回だけの面接ですべてが終了することはありません。従って、最初の面接ではあまり細かいことには触れずに、その方の課題を明確にし、スムースに次につなげる面接を心がけています。すなわち、今後のフォローをどのように進めていくかに重点を置いています。

医療機関への紹介が必要ない方へのアプローチ

面接を行ってみると、一般的な精神保健指導のみで済む方もいます。また、面接内容に職場適応的な面(上司との関係等)があれば、人事や上司の方とも面接する必要が出てきます。労務管理関連(職場への不平・不満等)が問題なら、労務部門の方と一緒に対応することもあります。

おわりに

ストレスチェック検査は2016年度から始まったばかりです。この制度を今後も有効に利用していくためには、最初に述べたように、この検査が職場環境の改善につなげるためのものであるということを今一度皆さんにご理解・ご納得していただくことが重要と思います。



(慶應義塾大学保健管理センター 河邊 博史)