川崎病
(Kawasaki Disease)

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【川崎病とは】

川崎病は3歳未満のこどもに多く見られる病気です。年間の患者発生数は増加しており、2014年には約1万6千人の患者が新たに発生しています。川崎病は小児科医である川崎富作氏により、特徴的な症状を示す小児患者50人をまとめて「指趾の特異的落屑を伴う小児の急性熱性皮膚粘膜淋巴腺症候群」(指さきの皮膚がむけ、皮膚、粘膜、リンパ腺に特徴的な症状があり、発熱を伴うこどもの症候群)として、1967年に初めて報告されました。そこで、現在は川崎病, Kawasaki diseaseと呼ばれています。日本人に多く、季節では12月~1月の冬場に多いことから、人種差などの遺伝要因と感染などの環境要因の関与が考えられていますが、未だに原因はわかっていません。川崎病の本態は全身性血管炎で、特に心臓に酸素や栄養を送る冠動脈という血管に強い炎症が起こることから、早期に適切な治療が行われないと後遺症として冠動脈に「こぶ」(冠動脈瘤)が生じることがあります。後にそこが狭くなったり血栓ができたりすると、血流の低下や途絶につながり、こどもでも狭心症や心筋梗塞といった重篤な合併症を引き起こします。

【川崎病の診断】

原因がわからないため、臨床症状から診断します。特徴的な症状として、①高熱、②両目の充血、③くちびるが赤くなる、舌がいちごのようにブツブツと赤くなる、④全身のさまざまな形の発疹、⑤手や足の先のほうが赤く腫れ、熱が下がったあとに指先から皮がむける、⑤首のリンパ節が腫れる、の6症状がみられます。この6症状のうち5つ以上あれば、川崎病と診断します。4つしか見られない時でも、心臓超音波検査で冠動脈瘤がみつかれば、川崎病と診断します。他にも、BCGワクチンの接種痕が赤く腫れるという症状は、川崎病に特異的で、これがあると川崎病が疑われます。後遺症の冠動脈瘤の発生を防ぐためには早期診断・早期治療が大切ですが、最初から全ての症状が揃わないことも多く、1回の診察では診断がつかないこともあります。気になる症状がある時には、早めに受診することが大切です。

【川崎病の治療】

原因がわからないため根本治療はありませんが、冠動脈瘤を発生させないために炎症を抑える治療を1日も早く始めることが大切です。治療としては、免疫グロブリンの点滴とアスピリンの内服を行います。重症の患者では、ステロイド治療も合わせて行います。治療を行っても熱が下がらない時には、さらに治療を追加します。熱が順調に下がり後遺症の冠動脈瘤を残していない場合でも、アスピリンの内服は数ヶ月間続けられます。冠動脈瘤ができてしまった場合には血栓を抑える薬を継続し、冠動脈障害が強い時は成人の狭心症や心筋梗塞と同じような検査や治療を行います。

【川崎病回復期の留意点】

一度熱が下がって回復しても、再発が4.2%にみられます。また、治療として使われる免疫グロブリンの影響が数ヶ月残るため、種々の予防接種を受けるタイミングを遅らせる必要があります。治療の経過が順調で後遺症の冠動脈瘤を残していない場合には、いつも通りに運動ができますが、念のため5年間は通院して経過観察を行います。冠動脈障害が後遺症として残る場合は、運動制限や内服治療の継続が必要になります。

【川崎病の既往のある人の留意点】

川崎病の既往のある人は、成人期以降に動脈硬化が進行しやすいという報告があることから、塩分や脂質の摂り過ぎがないように、健康的な食習慣をこころがけてください。



(慶應義塾大学保健管理センター 内田 敬子)