「てんかん」ってどんな病気?
("Epilepsy" - what kind of illness?)

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【てんかんとは】

私たちの脳では、活動性と抑制性の神経細胞が、常に調和を保ちながら活動しています。この神経細胞の活動が突然不具合を起こし、調和がとれなくなるために起こる様々な症状が「てんかん発作」です。また、てんかん発作を起こす疾患を「てんかん」と言います。てんかんは糖尿病や高血圧などと同じ慢性疾患で、人口のおおよそ0.5~1.0%に見られます。

【てんかんの診断】

てんかんの診断では、発作症状がてんかん発作か否かを正しく判断することが最も重要です。そのため、診察時には発作症状をできる限り詳しく医師に伝えていただくことが必要です。しかしながら、発作中は意識が障害されることが多く、本人が発作時の状態・状況を正しく伝える事は困難です。そのため、診察に際しては、発作症状を見ていた周囲の方々からの情報が必要になります。もちろん発作前後の自覚症状も診断の一助となることから、それらの症状を具体的に医師に伝えていただくことも大切です。

てんかんが疑われた場合、脳波検査、頭部画像検査、血液・尿検査などが行われます。脳波検査は、脳の神経細胞の働きを電気信号としてとらえて、発作を起こす可能性のある異常波形(てんかん波)を検出する検査です。てんかんの診断には欠かせない検査ですが、てんかんであっても、てんかん波が検出できないこともあります。また、頭蓋内出血や脳腫瘍などが発作症状の原因となる場合もあることから、頭部画像検査(CT、MRIなど)を行います。さらに発作症状はてんかん以外の疾患、例えば代謝異常症や脳炎のような中枢神経系の感染症でも起こることから、鑑別のため血液・尿検査が必要になります。

【てんかんの治療】

てんかんの診断がつくと、まずは発作を抑えるために、抗てんかん薬を毎日服用します。現在、日本で使用されている抗てんかん薬は約20種類ほどありますが、一つの薬でうまくコントロールがつかなければ、複数の薬を組み合わせて内服します。 成人の場合、一般に5年以上発作がない場合に、薬の内服中止を考慮します。

【てんかん発作の対処法】

てんかん発作の多くは、数十秒から2~3分で自然に収まります。てんかん発作自体で命を落とすことはありません。発作中は、大きな声で呼びかけたり体を揺することはせずに、安全な場所に静かに横たわらせ、服を緩め、吐物や唾液を誤嚥しないように顔を横に向けてください。発作中に舌を噛み切ることは絶対にありません。口の中に物を入れることは役に立たないばかりか、かえって危険ですので止めてください。

発作中の手足の動き、体の硬さ柔らかさ、眼球の位置、けいれんが続いた時間などが観察できた場合は、ご本人やご家族に伝えてください。ご本人は意識障害を起こしている場合が多く、診断のためには居合わせた方からの情報が大変重要になります。



(慶應義塾大学保健管理センター 有馬 ふじ代)