前立腺特異抗原(PSA)による前立腺がん検診
(PSA-screening for prostate cancer)

  • Date:

【PSA検診とは?】

近年、前立腺がんの患者数が増加しており、胃がん、肺がん、大腸がんに続き第4位となっています。前立腺がんになると血液中のPSAという物質が増加します。そのため、PSAは前立腺がんの診断や治療後の経過観察に有用なマーカーとして認められ、前立腺がん検診として広く測定されています。慶應義塾の教職員健康診断では、50歳以上の男性を対象に、PSA検診を実施しています。

【PSA検診の有用性は?】

わが国では、PSA測定は前立腺がんのスクリーニングとして最も有用と考えられています。現在までにPSA検診の有用性を検証した複数の大規模研究が行われており、PSA検診により前立腺がんの死亡率が低下することや早期診断に有用であることが証明されています。しかし、一方でPSA検診による前立腺がんの死亡率の低下が認められないとの報告もあり、米国の一部ではPSA検診不要論が出ています。しかし、日本泌尿器科学会は、わが国では海外との前立腺がん診療の実態が大きく異なることから、PSA検診を継続する方針を示しています。

【PSA検診の欠点は?】

PSA検診のがん診断精度が高いが故に、無治療でも生涯進行しない臨床的に重要でないがんが診断されること(過剰診断)やそれらに対し治療が行われること(過剰治療)が不利益となっています。また、10%の前立腺がんは1回のPSA測定では見逃されてしまうことから、後述する決められた間隔での再検査が必要です。さらに、ごく一部には、PSAが増加しない前立腺がんが存在し、その場合PSA検診では発見することができません。

【PSA検診データの見方は?】

日本泌尿器科学会による「前立腺がん検診ガイドライン」では、PSAの基準値は全年齢で0.0~4.0 ng/mL、年齢階層別基準値は50~64歳:0.0~3.0 ng/mL、65~69歳:0.0~3.5 ng/mL、 70歳以上:0.0~4.0 ng/mLとなっています。健康診断時のPSA値が基準値を超えていた場合には、泌尿器科専門医への受診が必要となります。基準値以下の場合は、PSA値が1.0 ng/mL以下では3年毎、1.1 ng/mL以上では1年毎の再検査が推奨されています。



(慶應義塾大学保健管理センター 三井 俊賢)