学校健康診断における運動器検診
(Medical examination of bone and joint in school)

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児童・生徒の健康や発育の状態をチェックする学校健康診断は、学校保健安全法により検査項目が定められ、社会環境や健康課題の変化に合わせて内容の見直しが行われてきました。2014年度の改正では、運動器疾患を早期発見するための「運動器検診」が学校健康診断の必須項目に加えられ、2016年度から施行されることになりました。


【運動器とは】

「運動器」とは、身体を支えたり動かしたりするのに必要な骨、関節、筋肉、靭帯、腱などの器官の総称です。成長期の子どもの運動器は柔軟性に富みしなやかさに優れている一方で、成人に比べて強度が十分でなく、損傷を受けやすいという特徴があります。そのため、スポーツ活動で酷使することにより、骨・軟骨などの傷害が起こることが少なくありません。これまでの調査では、小中学生の10~20%が何らかの運動器疾患を抱えていることが報告されています。

【運動器検診の方法】

「運動器検診」は、骨、関節などの運動器について、その形態や発育、運動機能を調べる検診です。慶應義塾では、2012年度から学校健康診断において運動器検診を試行し、その方法について検討を重ねてきました。今回、試行期間の成績から、「学校健康診断における運動器検診マニュアル(2016年度実施案)」を作成しました。

具体的な方法としては、事前に「運動器問診票」を用い運動器疾患の既往とその後の問題点、運動器の痛み、上下肢の動作に関する問題点、スポーツ活動歴について調査を実施し、学校健康診断では学校医が胸郭、脊柱の運動器診察を行います。問診票で問題点が疑われる者、運動器診察で胸郭変形、脊柱側彎が疑われる者が、整形外科医による二次検診の対象となります。試行期間中の二次検診の結果では、脊柱側彎に次いで、膝関節傷害と診断された者が多くみられました。

【運動器疾患に関する教育啓発活動】

運動器疾患の早期発見には、運動器検診に加えて、運動器についての教育啓発活動が重要です。われわれの試行した運動器検診では、運動器疾患が疑われ二次検診の対象となった者は、脊柱側彎を除くすべての者で運動器の痛みなどの自覚症状が認められました。運動器疾患に関する知識の普及により、自覚症状のある者が自発的に医療機関を受診するようになれば、運動器疾患の早期発見につながります。



「スポーツに筋肉痛や関節痛はつきもの」と考えがちですが、初期対応を誤ると運動器に後遺症を残す可能性が高くなります。子どもの運動器疾患には早期発見、早期対応が何よりも大切です。



(慶應義塾大学保健管理センター 德村 光昭)