メンタルヘルス対策としてのストレスチェック制度
(Stress check system as a mental health measures)

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2014年6月25日、ストレスチェック制度を義務化するための、労働安全衛生法の改定案が国会で承認されました。従業員50人以上の事業所では、健康診断の一環として第1回目のストレスチェックを2016年11月までに行わなければいけないことになりました。

【ストレスチェック制度義務化への経緯】

1984年2月に、過労による自殺が労働災害として初めて認定されたことに始まります。当時は、うつ病という言葉を気軽に口にすることはできず、抑うつ状態に陥っても精神科を受診することは難しく、仮に受診しても職場にはとても言えない、抑うつで休職などありえないというのが、社会全般の価値観でした。その後、2002年3月になり、職場における自殺予防対策として『労働者の自殺予防マニュアル』が中央労働災害防止協会から出され、職場の中で労働者が抑うつ状態になるのは珍しいことではない、これを隠してはいけないという風潮が高まってきました。2006年には、労働者の心の健康の保持増進のための指針が示され、メンタルヘルス対策を各職場が実施する方向性が打ち出され、2014年6月にストレスチェック制度が義務化され、2015年12月から実施されることになりました。

【ストレスチェック制度とは】

自分が不調になったときはありがたい制度ですが、自分に問題がない場合にはメンタルヘルスの状態を事業主に知られることについて疑問を感じる方もいると思います。しかし、ストレスチェックは、身長、体重、血圧などと同様の、事業主が主体となって実施する健康診断の1項目にすぎません。「タニタ食堂」で一躍有名になった(株)タニタでは、社員全員に自社の活動量計を装着させ、定期的に身体活動量の順位を社長も含めて社内に掲示していますが、この継続によって会社の支払う医療費が激減しました。ストレスチェック制度も同様に、ストレスを指標化して自覚するようになることで、精神面の健康について自己管理することを目標としています。

慶應義塾大学では、2009年よりGHQという質問紙を使って心のセルフチェックを行ってきましたが、医師の面接を必要とする人は2009年の14%弱から2014年は9%弱まで減っています。ご自分にとってストレスが強いと感じること自体は、病気でも悪い兆候でもありません。ストレスを感じて、身体の不調につながる恐れや、業務に支障が生じるようであれば、事前に防止対策を講じることが必要です。保健管理センターでは、随時相談を受けつけており、必要に応じて産業医による職場への勧告や助言を行います。ストレスにより抑うつ状態となり休業に追い込まれることは、本人はもちろんのこと、職場の損失にもつながります。一丸となって取り組んでいきましょう。



(慶應義塾大学保健管理センター 西村 由貴)