胸部X線検査
(Chest X-ray test)

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いよいよ新年度が始まりました。各々、新しい目標を持って学校生活を送ろうとされていることと思います。学校生活を送る上で健康の保持増進は重要であり、そのために「学校保健安全法」に基づき、学生・教職員を対象に、毎年健康診断が行われています。健康診断で行われる検査の一つに、胸部X線検査があります。


胸部X線検査とは?

胸部X線検査は、胸部全体にX線を照射して平面撮影し、胸部臓器(肺、心臓など)に異常がないかどうかを調べる検査です。肺は空気が多いため、より多くのX線が通り抜けてフィルムにたどり着くので、より強く感光して"黒く"映ります。しかし、肺炎を起こしたり、肺に腫瘍が出来たりしているとX線が通り抜けにくく、肺炎や腫瘍の部分が"白く"映ります。また、心臓の大きさ、形から心臓の状態も評価出来ます。胸部X線検査での被曝量は0.06~0.15mSv (東京とニューヨークを飛行機で往復した際の宇宙からの放射線による被曝量とほぼ同じ)であり、胸部X線検査は少ない被曝量で胸部臓器の多くの情報が得られる有用な検査と言えます。

胸部X線検査の目的

「学校保健安全法施行規則」で、結核の有無を調べるために、胸部X線検査を施行するように定められています。それに準じて、慶應義塾では、新入生、教職員、医師から指示された方に対し、健康診断時に胸部X線検査を行っています。そして、それ以外の方は希望制にしています。多数の学生や教職員が同じ空間を共有する学校において、空気感染する結核は、集団感染を引き起こす可能性が高い感染症です。また、人口の多い都市部では依然として罹患率が高く、例えば、慶應義塾のキャンパスがある東京都特別区の罹患率 (人口10万対22.5)は全国の罹患率 (人口10万対16.1)を大幅に上回っています。以上より、慶應義塾において、結核感染対策は、特に重要な感染症対策であり、2週間以上咳または微熱が続く方には、胸部X線検査を受けるようお勧めしています。就職、アルバイト、実習、留学などを予定している方も、受け入れ先から胸部X線検査の結果提出を求められることがありますので、健康診断の際に胸部X線検査を受けることをお勧めしています。

胸部X線検査を受ける際の注意点

検査を受ける際に下記注意点を守っていただくことで、鮮明な胸部X線検査の画像が得られ、精度の高い診断が可能になります。

1.無地のTシャツ(ボタン、金具、装飾、プリント等のついていないもの)を着用して下さい。

2.カップ付きやゴムの入った下着、湿布等は撮影時に外して下さい。

3.髪の長い方は、髪を耳より上でまとめて下さい。

胸部X線検査の結果

胸部X線検査の結果には、「所見」と「判定」が記載されています。2名以上の医師が胸部X線検査の画像を確認して、正常では認められない陰影を認めた際に、所見が記載され、自覚症状の有無、以前撮影された胸部X線検査の所見との比較、既往歴などを参考に、その所見が病的なものかどうかを考慮し判定が下されます。判定はA、B、C判定に分かれ、C判定の場合は、再検査または医療機関での精査が必要となり、保健管理センター医師との面談を受けていただくことになります。健康診断の胸部X線検査で、緊急治療を要する気胸や肺炎が見つかることもあり、その際は、保健管理センターから至急ご本人に連絡し、早急に医療機関を受診していただくようにしています。A、B判定の場合は,その時点では就学・就業に支障はないと考えられますが、咳、微熱などが続く場合は、次回の健診を待たず、早めに医療機関を受診すること、主治医がいる方は結果を報告すること、学生の方は保護者に検査結果を報告することをお勧めしています。



(慶應義塾大学保健管理センター 西村 知泰)