新しい高血圧治療ガイドラインのポイント
(Essence of new Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH2014))

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2014年4月に2009年以来の「高血圧治療ガイドライン2014」が発表されました。今回、新たな改訂点のうち、皆さんに関連する内容を中心に解説いたします。


●診察室血圧と家庭血圧の値がいつも異なる場合、どちらを信じたらよいのか?

診察室血圧と家庭血圧の間に差を認める場合、家庭血圧による高血圧診断を優先させることになりました。最近、家庭血圧測定を行う方が増え、それに伴い診察室血圧と家庭血圧に差が出てくるケースが見られます。このような場合、今後は家庭血圧値を重視し、その値で高血圧の診断や降圧薬の量や種類を決めることになりました。これは、診察室血圧より家庭血圧の方が実際の血圧レベルをよく反映し、長期予後予測能をはじめとする臨床的価値の高いことがわかってきたからです。

●家庭血圧は一機会に何回測定すべきか?また、測定のタイミングは?

家庭血圧の一機会の測定回数に関し、従来は「1回以上(1~3回)」でしたが、今回「一機会原則2回測定とし、その平均をその機会の血圧値として用いる」という事になりました。これは、複数回測定する患者さんが多いことにもよりますが、「1回のみしか測定しない場合はその値、3回測定した場合には3回の平均を用いることも可」となっています。また、いつ測るかについては、従来からの「朝、晩」で変わりありませんが、晩は「就寝前」という事が明記されました。

●降圧目標は今までどおりか?

若年・中年患者さんの降圧目標が、従来の130/85 mmHg未満から診察室血圧140/90 mmHg未満、家庭血圧135/85 mmHg未満に緩和されました。しかし、糖尿病を合併している患者さんの降圧目標は130/80 mmHg未満に据え置かれました。世界のガイドラインでは糖尿病合併患者さんの降圧目標値が緩和される傾向にある中で、今回わが国では従来どおりに維持されたのは、脳卒中の発症が欧米に比べて1.5~2倍多いわが国の特徴が考慮されたからです。

最後に、今年4月に人間ドック学会が公表した「新基準値」に関してお話しします。これは、平成23年に人間ドックを受診した約150万人の中から、その時点で「健康」な成人約1万人~1万5千人を抽出してデータを分析したところ、血圧で言えば「基準範囲の上限が収縮期血圧147 mmHg、拡張期血圧94 mmHgであった」という内容です。「従来の140/90 mmHgを超える値でも健康を維持している方が多くいる」とも言えますが、人間ドック学会の説明文書では、今回のデータは単年度の結果で、今後数年間さらにデータを追跡調査して結論を出す予定で、今すぐ各学会の判定基準を変更するものではないと明言しています。従って、現時点では原則140/90 mmHg以上で治療対象、降圧目標は140/90 mmHg未満ということになります。これらの値は、実際に治療を受けられた患者さんを対象にした膨大な研究結果を基に決められたものです。医師の指導の下、適切に血圧が管理されることを願っています。


(慶應義塾大学保健管理センター 河邊 博史)