血尿、蛋白尿がみられたら
(hematuria and proteinuria)

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検尿の重要性

慢性腎臓病とは、"蛋白尿などの腎障害の存在を示す所見"もしくは"腎機能低下"が3カ月以上持続する状態と定義され、我が国の慢性腎臓病患者は1300万人と推定されています。慢性腎臓病は末期腎不全につながるだけでなく、心臓病や脳卒中の発症リスクを約3倍高めます。腎臓病は病初期では無症状のことが多く、早期発見には検尿が重要です。

血尿や蛋白尿は尿中に赤血球や蛋白質が混入した状態で、腎炎などの慢性腎臓病のみならず、尿路結石や膀胱癌などの泌尿器科領域の疾患の重要な所見です。蛋白尿では、尿中の蛋白量が多い人ほど末期腎不全への進行が早く、健康診断時の尿蛋白陽性者の追跡調査では、尿蛋白(3+)の人の15%が17年後に末期腎不全に陥ることが報告されています。また、血尿は、単独では短期間で腎機能に悪影響を与えることはありませんが、蛋白尿を合併する場合には末期腎不全への進行の危険性が高くなります。血尿陽性者では、当初は血尿単独であっても10%以上の人がその後蛋白尿を合併することから、年に一度以上の検尿を継続する必要があります。

血尿

血尿を認める場合には、腎・尿路系組織やそれに隣接する生殖器などからの出血性病変が考えられます。特に健康診断で偶然に発見された血尿では、尿路上皮癌の存在を念頭におく必要があります。再検査においても血尿や尿沈渣の異常がみられる場合には、尿細胞診検査や腎膀胱超音波検査などを受けることが推奨されます。さらに、40歳以上の男性、喫煙者、肉眼的血尿など尿路系腫瘍のリスクが高い人では、膀胱鏡を含めた精密検査が必要です。また、50歳以上の男性では、前立腺癌のスクリーニングとしてPSA (前立腺特異抗原)検査を行うことが望まれます。 

蛋白尿

健常人でも微量の蛋白質が尿中へ排泄されますが、1日500mg以上の蛋白質が尿中に排泄される場合に臨床的に異常と判定します。腎臓の障害だけでなく、激しい運動、脱水、発熱、体位の変化など様々な要因で蛋白尿が認められます。一般に、尿蛋白(2+)以上、または血尿を合併する場合には、腎臓病の存在を疑い精密検査が必要となります。


(慶應義塾大学保健管理センター 神田 武志)