心電図のお話
(Do you know Electrocardiogram?)

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【心電図とは】

心電図をご存じですか。健康診断で今までに一度は検査されたことがあると思います。手足をクリップで挟み胸に吸盤をつけるあの検査です。心臓は自らが作り出す電気で動いています。心電図は心臓が出す微弱な電流を増幅し記録する検査です。1903年にオランダのアイントホーフェンが開発したのが始まりで、その後の心疾患の診断や治療に大いに貢献しています。

しかしながら、心電図から心臓のすべての異常がわかるわけではありません。心疾患があっても見かけの電気活動が正常なら心電図所見は正常になります。たとえば、狭心症は労作などに誘発されて時々胸痛発作が見られる疾患ですが、発作中でないときの心電図所見は正常なことも多く診断がつきません。疑わしい症状があれば、24時間の心電図モニター(ホルター心電図)、運動負荷心電図などの精密検査が必要となります。

【心電図でわかること】

心電図から、電気の流れの乱れ(不整脈)や遅延・途絶(ブロック)などがわかります。また電気信号の大きさや向きから心臓の拡大や肥大、あるいは心筋内の血流の減少(虚血)などが推測できます。

【心電図所見について】

逆に、心電図所見がいわゆる正常範囲でなくても、それがただちに健康上の問題になるとは限りません。心電図所見は疾患名ではなく、心臓の電気活動から得られた波形に対してつけられたものです。したがって、それ自体は病的といえない所見がたくさんあります。たとえば「右軸偏位」、「反時計方向回転」、「不完全右脚ブロック」などは一種の電気用語といってよく、病的意義はほとんどありません。「期外収縮」はよくみられる不整脈ですが、正常な心臓から出ている場合は、まず心配はありません。そのような場合、健康診断では「心配なし」あるいは「経過観察」と判定されていると思います。自覚症状がなければその判定に従って大丈夫です。心電図所見の有無にかかわらず、動悸、胸痛など心疾患を疑わせる症状のある場合は、ぜひ医療機関で御相談下さい。


(慶應義塾大学保健管理センター 和井内 由充子)