はじめに
適度な飲酒は、食欲増進、ストレス緩和、コミュニケーションを円滑にするなどの効果があります。一方で、長期間の大量飲酒は肝疾患、生活習慣病、癌などの臓器障害や依存症など、マイナスの作用が大きくなってきます。お酒が健康に与える影響を知り、飲酒習慣を把握することで、お酒と上手につきあい、健康維持に努めましょう。
飲酒が体に与える影響
お酒はそれ自体のエネルギーに加え食欲増進作用もあり、飲酒量が多いほど肥満、高血糖、高血圧、脂質異常などの生活習慣病を来しやすくなります。また、肝臓癌、食道癌などの癌の発生や、不眠、うつ病など精神面にも影響を与えます。さらに、大量飲酒を続けることで健康や生活に悪影響が出ても飲酒行動をコントロールできなくなる依存症を発症することがあります。適度な飲酒量は純アルコール量で20 g/日程度、女性や高齢者はこの半分が目安とされており、生活習慣病のリスクが高まるのは男性で40 g/日、女性で20 g/日以上、さらに60 g/日を超えると多量飲酒と言われ、社会的問題へ発展するリスクが考えられます。
お酒を減らすことで疾病リスクを減らすことができる他、短期的には「仕事のパフォーマンスが上がった」、「睡眠の質が改善した」、「お金が節約できた」などのメリットも期待できます。健康を守りながら適切な飲酒習慣を身につけることが大切であり、「飲みすぎてしまいがち」という方は「減酒」を目標にして、下に示すようなステップを通してお酒との付き合い方を考えてみましょう。
① 現在の飲酒状況を確認する
厚生労働省が生活習慣病のリスクとするアルコール量は男性で40 g/日、女性で20 g/日以上です。目安として、ビールなら500ml、ワインならグラス2杯、缶チューハイなら350mlがアルコール20gに相当します。普段飲んでいる量を純アルコール量に換算してみましょう。飲み方に関しては、アルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)という質問票があり、あてはまる点数の合計が高いほど飲み方に問題があると考えられます。
② 健診結果により現在の健康状態を把握する
肝臓は飲酒によるダメージを受け、過度の飲酒はアルコール性肝障害や脂肪肝、肝硬変のリスクにつながります。AST, ALTが31 IU/L以上, γ-GTPが51 IU/L以上であれば要注意です。数値が正常範囲内でも、過去の数値と比較することで悪化の兆しがあるかをチェックしましょう。
③ 飲みすぎのパターンを知る
接待や友人・同僚との宴会、週末や休日など、自分がどのようなときに多く飲んでいるか、パターンを把握しましょう。眠れないときに寝酒をする方もいますが、寝酒は睡眠を浅くしますのでお酒の力を借りない方がよいでしょう。
④ 減酒目標を設定する
飲酒習慣を変えるため、目標を設定しましょう。「どのように減らせばよいかわからない」という人も、「飲酒量を少し減らす」「休肝日を作る」など、今より少しだけ飲酒量を減らす目標を立ててみましょう。減酒した後の体調や体重などの変化を見ることで、今の酒量が適切かどうか自覚できるようになってきます。③で飲みすぎのパターンを把握しておくことで、飲酒量を減らす具体策の設定につながります。
⑤ 飲酒日記をつける
飲酒量、体重、体調などを記録することで振り返りができます。客観的に飲酒状況を見ることで、減酒にあたっての課題が見えてきます。目標を設定しなおし、さらなる減酒が可能かどうか試してみましょう。摂取量が減ることで、少しずつ今までより少ない量で満足できるようになっていくことが期待できます。
また、厚生労働省は「健康を守るための12の飲酒ルール」を掲げています。
- 飲酒は1日平均2ドリンク(=20g)以下
- 女性・高齢者は少なめに
- 顔が赤くなる体質の方も少なめに
- たまに飲んでも大酒しない
- 食事と一緒にゆっくりと
- 寝酒は極力控えよう
- 週に2日は休肝日
- 薬の治療中はノーアルコール
- 入浴・運動・仕事前はノーアルコール
- 妊娠・授乳中はノーアルコール
- 依存症者は生涯断酒
- 定期的に検診を
こちらの飲酒ルールも参考に、ご自身の飲酒習慣を振り返ってみてください。健康を守りながら、節度ある適度な飲酒習慣を心がけましょう。
【参考資料】
1)真栄里仁、伊藤満 監修:健診結果が気になる酒好きの方へ お酒をちょっと減らして健康になろう!!,東京法規出版
2)厚生労働省. e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html
3)健康日本21 (アルコール)
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html#A51
4)厚生労働省. e-ヘルスネット AUDIT
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-021.html
5)厚生労働省. e-ヘルスネット 飲酒量の単位
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html