2022年度健康情報シリーズ臨時特集"特定保健指導"
⑧働き世代の健康対策(Health Care for the Working Generation)

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疾病を未然に防ぎましょう

 年齢を重ねるにつれて体の不具合は増えていきます。療養や受診の時間確保は難しいかもしれませんが、より早く軽い状態で対応することで、むしろ時間の節約になるとも考えられます。既に診断された疾病がある場合には、必要に応じて定期的に受診し、療養や生活習慣の改善などセルフケアの時間を確保しましょう。自覚症状がない方も、健康に良い生活習慣へ寄せていくことで将来の健康状態がより良くなることが期待できます。

特に注意すべき疾病

 日本で特に患者数が多いのは、がん、脳卒中、心血管疾患(心筋梗塞等)、糖尿病、および精神疾患の5疾病です。これに加え重要視されているのが、移動するための能力が不足したり衰えたりした状態であるロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)と骨折です。また、介護が必要となる原因は、認知症を除くと、男性では脳卒中が、女性では転倒や骨折、関節の病気など、身体を動かす機能の故障が上位をしめています。脳卒中などの動脈硬化性疾患はメタボリックシンドローム(以下、メタボ)対策により、身体を動かす機能の故障はロコモ対策により予防できる可能性があります。働き世代のうちから、メタボとロコモ双方への対策を行うことが必要です。

ロコモと骨折予防

 ロコモ予防で大切なのは、若いうちから食生活に気をつけ、定期的に体を動かし適度に筋肉をつけることです。ロコモは簡単なテストでチェックできます(https://locomo-joa.jp/check/test/)。無理のない範囲で、片脚立ちとスクワットを毎日続けることが推奨されています(https://locomo-joa.jp/check/locotre/)。

 骨折予防には骨粗鬆症対策が重要です。骨量は20歳頃最大になり、その後、加齢に伴い減少します。特に女性では、閉経に伴い骨量が減少しやすくなります。カルシウムの摂取と日光浴、ウォーキングや筋トレなど骨に刺激が加わる運動が推奨されています。

がんの予防

 日本人のがん予防には、禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重、感染への対応が重要です。このうち、感染を除く5つについての対応により、がんリスクはほぼ半減します。食生活については、塩分の摂り過ぎに注意する、野菜と果物を適度にとる、熱い飲み物や食べ物は少し冷ましてから口にする、ことが勧められています。身体活動については、 歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと、に加え、息がはずみ汗をかく程度の運動を毎週60分程度行うこと、が推奨されています。適正体重については、男性の場合BMI 21~27 kg/m2、女性の場合21~25 kg/m2の範囲で維持するのがよいと考えられています。BMIが30 kg/m2以上の女性では、乳がんや子宮体がん発症率が高く、がんによる死亡リスクが高くなります。

精神疾患の予防

 禁煙、節酒、バランスのとれた食生活、適度な運動、および休養と睡眠は、こころの健康においても重要です。余裕がないと、元気な時であれば上手くつきあえるストレスにも対応しきれなくなります。ストレス発散のための喫煙や過度の飲酒、過食、生活時間を削ってのゲームやスマホの使用は、かえって体調を悪化させる原因となります。

健康状態をチェックしましょう

 保健管理センターや慶應義塾健康保険組合からご案内する、健康診断・消化管検診・がん検診を受けましょう。症状がある場合は、健康診断を待たずに保健管理センターや医療機関に相談しましょう。また必要に応じて眼科や歯科で受診しましょう。加齢に伴い、緑内障や白内障などが進行している可能性もあることから、40 歳以上の方では眼科での定期検査が勧められています。また、定期的な歯科検診により歯の喪失を防ぎ、歯の健康を守りましょう。


参考資料

1) 目の定期検査のすすめ. 日本眼科医会. https://www.gankaikai.or.jp/health/43/index.html

2) 歯科検診を定期的に受けよう. 日本歯科医師会. https://www.jda.or.jp/go/check.html



(慶應義塾大学保健管理センター 後藤伸子)