2022年度健康情報シリーズ臨時特集"特定保健指導"
⑦動脈硬化症について
(About atherosclerotic diseases)

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動脈硬化とは?

 動脈は心臓が送り出す血液を全身に運ぶ血管で、簡単に破れたり詰まったりしないように強さと弾力性を持っています。この動脈の壁にコレステロールなどがたまり、"プラーク"と呼ばれるコブができると血管の内側が狭くなり、いずれ血管の弾力性も失われてしまいます。この状態を"動脈硬化"といいます

動脈硬化が引き起こす様々な病気(動脈硬化症)

 動脈の壁に傷ができると、変性したコレステロール等が入り込み、血管の内側にプラークができ始めます。このプラークが大きくなると、動脈硬化が進行します。例えば、心臓を栄養する血管(冠動脈)が狭くなると狭心症が起こります。また、大きくなったプラークに血のかたまりが付き、それがプラークと一緒にはがれると下流の血管が詰まってしまい、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。動脈硬化が原因の心筋梗塞や脳血管障害は日本人の死因の30%近くにのぼります。他にも、動脈硬化は足や腹部の閉塞性動脈硬化症や腎不全なども引き起こします。動脈硬化は生命に関わるさまざまな病気の原因となるため、ぜひとも予防したいものです。

動脈硬化を悪化させる危険因子

 悪玉であるLDLコレステロールは血管壁にコレステロールを運び、動脈硬化を進行させます。一方、善玉であるHDLコレステロールは血管壁からコレステロールを回収する働きを持っています。そのため、LDLコレステロールが高い(140 mg/dL以上)、またはHDLコレステロールが低い(40 mg/dL未満)脂質異常症は、喫煙と並び動脈硬化の強い危険因子の一つです。その他、肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧などでは血管壁に傷が付きやすく直りにくいため、動脈硬化を進行させます。また、高血圧はプラーク破裂の原因にもなります。日本動脈硬化学会から、一般の方向けに冠動脈疾患発症予測ツールが出ていますので、以下をご参照ください。

冠動脈疾患発症予測ツール(一般向け)【日本動脈硬化学会】 (j-athero.org)

動脈硬化の予防

 動脈硬化は進行し、合併症を起こすまで自覚症状がないことがほとんどです。そこで、動脈硬化のリスクを減らすには、①適正体重を維持する、②禁煙する、③コレステロールの多い食品を減らす、④甘いものやアルコールを控える、⑤食物繊維を多く摂る、⑥薄味にする、⑦適度な運動を取り入れる、などが大切です。

 年齢、性別(男性)、肥満度、喫煙、血圧、コレステロール、血糖やHbA1c値、動脈硬化の家族歴などで動脈硬化の危険度を判断し、リスクの高い人は眼底検査や頚動脈エコー検査などで動脈硬化の程度を知ることが重要です。これらの検査は、人間ドックなどでも行うことができます。



(慶應義塾大学保健管理センター 広瀬 寛)