2022年度健康情報シリーズ臨時特集"特定保健指導"③
睡眠と休養は健康の最重要課題です
(Sleep and rest are paramount to your good health)

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睡眠の重要性

 睡眠は、生命を維持するために不可欠な生活習慣です。エネルギーを節約する役割、休息し回復する役割、記憶の定着や整理の役割があると考えられています。睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にします。また、適切な判断力を鈍らせ、頭痛やそのほかの体の痛みや消化器系の不調などが現れるなど、健康を直接蝕み、生活の質に大きく影響します。

1時間余分に寝てみましょう

 睡眠必要量は、質的な問題や個体差が大きく、成人で5-10時間と幅があります。7-8時間より長すぎても短すぎても、2型糖尿病や、肥満、高血圧などの代謝性疾患、冠動脈疾患、うつ病および死亡率のリスクが上昇すると報告されています。アメリカ睡眠医学アカデミーは、5-11歳には10時間以上、12-19歳には9時間以上、20歳以上には7時間以上の睡眠を推奨しています。

 ところが、日本の20歳以上男女の1日平均睡眠時間は、6時間以上7時間未満の割合が最も高く、7時間以上を満たす割合は男性で3割、女性で 2割程度しかいません。睡眠確保の妨げとなることについて、男女ともに 20 歳代では「就寝前に携帯電話、メール、ゲームなどに熱中すること」、30~40 歳代男性では「仕事」、30 歳代女性では「育児」と回答した方の割合が最も高くなっています。現代の日本では、少なくとも1時間程度睡眠が不足していると考えられています。

睡眠のセルフケア

睡眠のセルフケアで最も大切なのは、規則正しい睡眠習慣と光/闇の調整です。


起きるときのおススメ

朝、起きたらカーテンを開けて自然の光を取り込みましょう。
朝ごはんを簡単なもので良いので食べましょう。
日中、戸外活動をしましょう。

寝る前のおススメ

布団に入る時刻は出来るだけ毎日同じにしましょう。
夜の光(スマホ、PC、テレビ)は避けましょう。
寝る前の激しい運動は控えましょう。
就寝の2~3時間前の入浴が理想です。
寝る直前の食事、カフェイン摂取、喫煙、飲酒は控えましょう。

眠れない、昼間眠くて目覚めていられない、眠っている間に息が止まる、脚がむずむずする/脚が勝手にぴくぴくする、眠っている間に歩き回る、眠っている間に大声を出す、学校や職場のスケジュールに合わせて起きられない、などの症状が続き困ったときには、医療機関や保健管理センターで相談しましょう。

休養はパフォーマンス向上に不可欠です

 「休養」には、仕事や活動によって生じた心身の疲労を回復し、元の活力ある状態にもどすという「休む」側面と、明日に向かっての鋭気を養い、身体的、精神的、社会的な健康能力を高めるという「養う」側面とがあります。休養不足は身体的ストレス反応(疲労、痛みなど身体的側面への影響)や心理的ストレス反応(気力の低下、不眠など心理的側面への影響)に現れます。


<休養不足チェックリスト>(大阪がん循環器病予防センターサイトより)

朝起きた時に疲れがとれていない日が多い
いくら寝ても寝足りない気がする
朝早く目が覚めて、その後よく眠れない
肩こり、頭痛が続いている
食欲がない、または便通がよくない
以前楽しめていたことが楽しめない
理由もないのにイライラする
仕事(家事)に集中できない
仕事に行くのが(家事をするのが)おっくうだ

以上の質問であてはまる項目が多いほど要注意です。半分以上あてはまる人はかなり休養不足であるといえます。

休養をどうとるか

質の良い睡眠をしっかりとりましょう
仕事や学校のある日も積極的に気分転換を行いましょう。
休日は、自分の心身の疲労度に合わせた休養をとりましょう。
疲れがかなりたまっている人:自宅や近くでゆっくりリラックスして過ごしましょう。
疲れがややたまっている人:軽い運動や趣味の活動を無理ない範囲で行いましょう。
疲れを感じていない人:積極的に何か新しいことに挑戦してみましょう。

睡眠・休養と時間の確保のバランス

 睡眠や休養をとるには「時間」が必要です。そのためには、自分の生活を調整する必要があります。働き方やその他の活動を調整することで、自らを癒すための時間を確保することは、個人だけでなく社会全体の生産性を上げることに繋がります。生活すべてのバランスを取ることを目指すのではなく、自分が一番大切だと感じることに意識を向け、したいこと・できることから始めてみるのはいかがでしょうか。


参考資料
1) タニカワ久美子、2018年、職場のメンタルヘルスと実践. ストレス対処のための運動・栄養・休養. 講談社.
2)厚生労働省. e-ヘルスネット 眠りのメカニズム.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html
3)厚生労働省.令和元年「国民健康・栄養調査」の結果の概要.
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
4)健康日本21(休養・こころの健康 .
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b3f.html
5)内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室. 「仕事と生活の調和」推進サイト.
https://wwwa.cao.go.jp/wlb/
6)American Academy of Sleep Medicine. https://aasm.org/
7)大阪がん循環器病予防センター
http://www.osaka-ganjun.jp/health/lifestyle/rest.html#sec02



(慶應義塾大学保健管理センター 後藤伸子  )