ヘルスリテラシーを高めましょう
( Let's improve our health literacy!)

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皆さんはヘルスリテラシーという言葉をご存じですか。ヘルスは健康、リテラシーは識字力(読み書き能力)という意味ですが、では、「健康に関する読み書き能力」とは何でしょう。一般的に、ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する情報を「入手」し、「理解」し、「評価」し、「活用(情報を使うことでより健康に結びつくような、よりよい意思決定を行うこと)」する能力とされています。


ヘルスリテラシーが不十分な場合、次のような影響があるとされています:予防サービス(健診・予防接種など)を利用しない/予防・治療・薬などの知識が少ない/ラベルやメッセージが読み取れない/病気や怪我のサインに気づきにくい(悪化させやすい)/慢性的な病気を管理しにくい/保健・医療の専門家(保健師や医師・看護師など)に自分の心配事を伝えにくい/慢性の病気のために入院しやすい/救急サービスを利用しやすい/職場で怪我をしやすい/死亡率が高い/医療費が高くなる。


このように、ヘルスリテラシーが低いことは人々の健康に影響します。しかし、残念ながら日本人のヘルスリテラシーは国際的にみてもかなり低いことがわかっています。日本では、米国の疾病対策センター(CDC)に相当する機関がないことや、国民に分かりやすく健康情報を伝える公的機関が不十分であり、正しい医療情報が入手しにくい状態であることもその一因とされています。また、日本では、情報の「入手」「理解」「評価」「活用」のプロセスにおいて、理解まではできても、その後のプロセス、すなわち判断したり意思決定したりすることが難しい傾向があるともされています。その背景には、日本におけるメディアリテラシーの不足、すなわちメディアの情報を基に適切に意思決定ができる力の不足も指摘されています。 


現代の世の中にはメディア情報が溢れています。そんな中で私たちは何に気をつけて情報を入手すればよいのでしょうか。 「か・ち・も・な・い」は、聖路加国際大学大学院の中山和弘教授が提唱されている「情報の内容の質や信頼性について注意すべき5つのポイント」の頭文字を並べたものです。情報はこの5つを確認しないと「価値もない」と覚えられます。是非、参考にしてみてください。


保健管理センターでは、毎年秋に教職員健康診断と同時に特定健康診査を実施しています。その結果から、将来、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な心血管疾患を引き起こす可能性が高いとされるメタボよりも、さらに手前での対応を目指し、基準を満たすと判定された方に対して生活習慣を見直すサポート(特定保健指導)をご案内しています。

か:書いたのは誰か、発信しているのは誰か

ち:違う情報と比べたか

も:元ネタ(根拠)は何か

な:何のための情報か

い:いつの情報か


日本人の多くが高いヘルスリテラシーを身につけられていないことは、本人の責任ではなく、ヘルスリテラシーを身につけにくい環境にいるということなのですが、かといって、このままではいられません。まずは、適切な健康情報を「入手」することから、ヘルスリテラシーを高めていきましょう。


では、まさに今、皆さんが情報を「入手」しようとしている、この「健康情報シリーズ」についても上記の「か・ち・も・な・い」をチェックしてみましょう。「健康情報シリーズ」は、保健管理センターの教育活動の一環として、健康管理に関する実用的な知識の普及を図ることを目的に提供しています(「な」)。保健管理センターの医師あるいは保健師などが(「か」)、できるだけ最新の教科書や論文を基にして(「も」)、様々なテーマの健康情報をわかりやすくまとめています。それぞれの情報には公開年月日が記されています(「い」)。 是非、違う情報とも比べながら(「ち」)、十分に「理解」してください。そのことこそが、ヘルスリテラシーを高める第1歩と思います。


【参考文献】 中山和弘:COVID-19とヘルスリテラシー,看護研究 53(6): 450-457,2020 福田洋,江口泰正,編著: ヘルスリテラシー ―健康教育の新しいキーワード, 大修館書店,2016



(慶應義塾大学保健管理センター 井ノ口美香子  )