新型コロナウイルスワクチン
(COVID-19 vaccines)

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【新型コロナウイルスワクチンの種類と特徴】

 ワクチンは、病気を起こさないように弱くした病原体そのものを使用する生ワクチンと、病原体の一部を使用する不活化ワクチンの二つに分けられます。一般的には、病原体そのものを使用している生ワクチンは免疫獲得に必要なワクチン接種回数が少なく、ワクチン接種によって獲得される免疫が強い反面、ワクチン接種による副反応も生じやすいという特徴があります。不活化ワクチンは病原体の一部を使用しているため、免疫獲得に必要なワクチン接種回数は多い一方、ワクチンによる副反応(後述)は少ないことが特徴です。
 世界保健機関(WHO)に2021年2月25日までに緊急承認されている新型コロナウイルスワクチンは2種類であり、ファイザー社およびアストラゼネカ社が製造しています。新型コロナウイルスはウイルスの表面に存在するSタンパクを用いてヒトに感染します。新型コロナウイルスワクチンは、このSタンパクを作る設計図である遺伝子をヒトに接種し、ヒトの中でSタンパクを合成することによって新型コロナウイルスに対する免疫を獲得する仕組みになっています。Sタンパクの設計図であるmRNAを人工的に合成した脂質などで覆ったものがmRNAワクチンです。ファイザー社のワクチン、および日本が供給を受ける契約を行っているモデルナ社のワクチンがmRNAワクチンに該当します。mRNAは自然界ではすぐに分解されてしまうため、超低温で保管する必要があります。Sタンパクを作るための遺伝子をヒトに接種するにあたり新型コロナウイルス以外のウイルスを用いているワクチンがベクターワクチンであり、アストラゼネカ社ではチンパンジーのアデノウイルスを使用しています。このワクチンは冷蔵保存できるのが特徴です。日本では、多くのワクチンが皮下接種されていますが、新型コロナウイルスワクチンは2種類とも筋肉注射であり、免疫の獲得には2回の接種が必要です。  

【ワクチンの効果、有害事象および副反応】

 新型コロナウイルス感染症に対する開発段階のワクチン有効率は、ファイザー社製ワクチン95%、モデルナ社製ワクチン94%、アストラゼネカ社製ワクチン62%と報告されています。ワクチン接種後に認められた期待されている効果以外の反応を有害事象、有害事象のうちワクチンが直接の原因であるものを副反応と呼びます。米国では2021年1月24日までに2000万人以上がファイザー社製またはモデルナ社製ワクチンを少なくとも1回接種していますが、このうちの70%の人が接種部位の疼痛を訴えています。ファイザー社製ワクチンに関する有害事象は、1回目接種後より2回目接種後に多く、2回目接種後は4人に1人が発熱することが報告されています。ワクチン接種後に全身性のアレルギー反応であるアナフィラキシーを発生する頻度は、ファイザー社のワクチンで100万回に5回、モデルナ社のワクチンで100万回に2.8回であり、71例中68例が女性でした。ワクチン接種後のアナフィラキシーは、1回目の接種後に多く、接種後15分以内の発症が7-8割を占めています。このため、ワクチン接種後は少なくとも15分経過を観察することが必要です。米国では過去に他のワクチンや注射薬などへのアレルギー症状の既往がある者およびアナフィラキシーの既往がある者では接種後30分の経過観察を行っています。
 新型コロナウイルスワクチンは、新型コロナウイルスの流行拡大に伴い短期間に開発が進みました。このため、ワクチン効果の持続期間などは現時点では明確になっていません。ワクチン接種にあたっては、厚生労働省のHP(新型コロナワクチンについて https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html)などを参考にしてください。



(慶應義塾大学保健管理センター 康井洋介  )