検尿異常(蛋白,潜血)
(Abnormal Urinalysis (urine protein and occult blood))

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 慢性腎臓病は、腎臓の障害や機能低下が持続する疾患で、進行すると、不可逆的(元の状態に戻らない状態)になり、最終的には透析療法や腎移植が必要な「腎不全」となります。また、慢性腎臓病は、心筋梗塞や脳卒中,心不全などの心血管疾患や、死亡のリスクを上昇させます。したがって、腎不全や心血管疾患を予防するためには、慢性腎臓病を早期に発見して適切に治療することが必要です。慢性腎臓病では、多くの場合、自覚症状に乏しいため、早期発見には、健康診断時の検尿(蛋白,潜血)が重要な手がかりになります。

 健康診断で行われる検尿は、試験紙法を用いて行われます。尿蛋白の検出の場合、試験紙にpH指示薬が含まれており、尿の中に蛋白質が存在すると、蛋白分子がpH指示薬と結合して、真のpHと異なる色に変化することを利用します(蛋白誤差法)。アルカリ化した尿では、蛋白の有無に関係なく、尿のアルカリ性だけでpH指示薬が変色することがあり、その場合は偽陽性となります。一方、尿潜血の検出の場合には、試験紙に過酸化物と色原体が含まれており、尿中に赤血球の成分であるヘモグロビンが存在すると、ヘモグロビンの作用により、過酸化物が分解されて酸素が生じ、この酸素が色原体を酸化型(有色)に変化させることを利用します(ヘモグロビン接触活性法)。ちなみに、アスコルビン酸(ビタミンC)を多量に摂取すると、尿中のアスコルビン酸が色原体の酸化を防いでしまい、偽陰性となります。

【尿蛋白】

 試験紙法では、1+が30 mg/dL、2+が100 mg/dL、3+が300 mg/dLの蛋白濃度に相当します。尿蛋白が2+,3+では、将来透析が必要になる確率が高くなるので、注意が必要です。起立時に出現する起立性蛋白尿や、激しい運動後に生じる蛋白尿など、治療を必要としない蛋白尿もあります。しかし、本来、蛋白質は身体にとって大切な構成成分であり、腎臓に問題がなければ、尿に蛋白質が漏れ出てくる(1+以上となる)ことは極めて稀です。1日に0.5~1 g以上の蛋白尿が持続する場合は、腎臓から組織の一部を採取して、顕微鏡で評価する精密検査(腎生検)が必要となることがあります。

【尿潜血】

 試験紙法で1+以上を陽性とします。試験紙では、筋肉に含まれるミオグロビンにも反応するため(偽陽性)、陽性となった場合には、通常、尿中の赤血球数を算定し(尿沈渣検査)、血尿かどうかを確認します。血尿は、腎臓の疾患だけでなく、尿の通り道である尿路の疾患でも生じるため、尿路上皮癌の危険因子である40歳以上の男性,喫煙歴,化学薬品への曝露,肉眼的血尿,鎮痛剤の多用などを有する場合には、特に注意が必要です。



(慶應義塾大学保健管理センター 畔上達彦  )