感染性胃腸炎
(Infectious gastroenteritis)

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感染性胃腸炎とは

 感染性胃腸炎は、細菌、ウイルスなどの病原体による嘔吐や下痢を主症状とする感染症です。原因として圧倒的に多いのはウイルス感染による胃腸炎で、例年これからの時期に流行します。その中でもよく見られるロタウイルス感染症とノロウイルス感染症について取り上げます。

ロタウイルス感染症

(症状)

 乳幼児がかかりやすい感染症です。1~2日間の潜伏期間をおいて発症します。発熱と嘔吐から始まり、24~48時間後に頻繁な下痢を認めます。通常1週間ほどで自然に治癒します。脱水がひどくなるとショック、電解質異常、時には死に至ることもあるため注意が必要です。

(治療)

 特異的な治療はありません。嘔吐や下痢に伴う脱水や電解質異常に対して経口または点滴による補水を行い、治癒を待ちます。

(予防)

 ロタウイルス感染症は初回感染時に重症化することがあるため、予防が大切です。2011年にロタウイルスワクチンが承認され、乳児を対象に予防接種が行われるようになりました。ワクチン導入前は、急性胃腸炎で入院した5歳未満の小児において原因の約半数がロタウイルスによるものであり、重症化した症例は乳幼児40人に1人にのぼっていました。ワクチン導入によって、ロタウイルス感染症全体では約80%、重症例に限ると約95%もの予防効果があったと報告されています。2019年10月現在はまだ任意接種ですが、2020年度には定期接種化が実現する予定です

ノロウイルス感染症

(症状)

 小児から高齢者まで罹る感染症です。1~2日の潜伏期間をおいて発症します。主な症状は嘔吐、下痢、腹痛で、ロタウイルス感染症よりも嘔吐が目立ちます。通常1~2日間で自然に治癒します。

(治療)

 ロタウイルス感染症と同様、特異的な治療はなく、嘔吐や下痢に伴う脱水や電解質異常に対して経口または点滴による補水を行います。

(予防)

 ノロウイルスワクチンはまだ開発中です。ウイルスの外殻タンパク膜を正確に模倣してウイルス様粒子を作成する技術を用い、ヒトに感染する主な2つの遺伝子型を含んだワクチンが作成されました。ワクチン接種により、重症度が有意に軽減することが判明し、期待が高まっています。

 感染力が強いため、感染者が出た場合には、手洗いの徹底、吐物や排泄物の適切な処理、次亜塩素酸(家庭用塩素系漂白剤)による汚染箇所の消毒などの感染拡大を防止する対策を講じることが重要です。アルコール消毒は効果がありません。

(次亜塩素酸ナトリウムによる消毒処理)

 糞便や吐物が付着した床、衣類、トイレなどの消毒には、家庭用塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム濃度約5%)の50倍希釈溶液(次亜塩素酸ナトリウム濃度0.1%)、調理器具や直接手で触れる部分の消毒には、200倍希釈溶液(次亜塩素酸ナトリウム濃度0.02%)の消毒液を使います。



(慶應義塾大学保健管理センター 長島由佳 )