肺がん
(Lung cancer)

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肺がんとは

 わが国の死因別にみた死亡率(1年間に人口10万人あたり何人死亡するか)の1位はがんで、298.3と報告されています(平成30年 我が国の人口動態)。現在、「生涯の内、男性・女性共に、2人に1人ががんにかかり、男性は4人に1人、女性は7人に1人ががんで亡くなる」と言われており、がんは身近な病気です。

 気管、気管支および肺組織から発生するがんを原発性肺がん(肺がん)と言います。国立がん研究センター がん対策情報センター 「がん登録・統計」によると、肺がんの罹患率(1年間に人口10万人あたり何例がんと診断されるか)は、男性が124.3、女性が54.5で、胃がんや乳がんに比べ低いですが、肺がんの死亡率(1年間に人口10万人あたり何人死亡するか)は男性が87.4、女性が33.0で、部位別がん死亡率の男性で1位、女性で2位となっており、生命予後の悪いがんの一つです。

肺がんは喫煙との関連が非常に大きいがんです

 わが国において、喫煙者は非喫煙者に比べて、肺がんになる危険性が男性で4.4倍、女性で2.8倍高くなることが報告されています(Jpn J Clin Oncol. 2006; 36(5): 309-324.)。更に最近、受動喫煙により肺がんになる危険性が高まることも判明しました(Jpn J Clin Oncol. 2016; 46(10): 942-951.)。よって、肺がんの予防として、喫煙者は禁煙を、非喫煙者はたばこの煙を避けて生活することが重要です。

小細胞がんか非小細胞がんか

 肺がんは、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分かれます。小細胞がんは、肺がんの約15%を占め、喫煙との関連が大きいです。増殖が速く、他の臓器に転移しやすいですが、非小細胞がんよりも化学療法や放射線治療の効果が得られやすいです。非小細胞がんは、小細胞がんではない肺がんの総称で、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌の順に多いです。腺癌は肺の末梢に発生するもの(肺野型)が多く、女性の肺がんで一番多く、扁平上皮癌は太い気管支に発生するもの(肺門型)が多く、喫煙との関連が大きいです。治療方針の選択や生命予後の推定において、小細胞がんか非小細胞がんかの判定は重要になります。

分子標的薬や免疫療法の登場

 肺がんは、外科療法・放射線治療・薬物療法(化学療法等)を組み合わせた治療が行われます。特に近年、化学療法以外の薬物療法である、がん細胞の増殖・転移を司る分子機構を特異的に阻害する分子標的薬や免疫療法の登場により、肺がんの治療法は多様化してきています。分子標的薬の草分け的存在のゲフィチニブはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異がある肺がんの症例に効果があります。また、がん細胞の中にはPD-L1を発現し、免疫担当細胞であるT細胞のPD-1と結合することで、がん免疫を抑制するものがあり、ニボルマブやペムブロリズマブは、PD-1に対する抗体薬でこの結合を阻害し効果を発揮する免疫チェックポイント阻害薬です。

おわりに

 肺がんも他のがんと同じく、早期発見・早期治療が重要です。わが国では、死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから肺がん検診が推奨されています。定期健康診断での胸部X線検査受検をお願いします。



(慶應義塾大学保健管理センター 西村 知泰  )