聴診器について
(History and Role of Stethoscope)

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 医師といえば聴診器を首からぶら下げているイメージがあるのではないでしょうか。昔から聴診器は医師のトレードマークでありました。聴診器の歴史、役割および利点につきご紹介します。 

聴診器の歴史

 胸の音を聴くことが病気の診断に役立つことは、古代ギリシャ時代から知られていました。その方法はというと、医師が患者さんの胸に直接耳を当てて聴いていました。聴診器が発明されたのは1816年Laennecというフランス人医師によってです。空洞になった長い木の棒の端を叩いたり引っ掻いたりした音を反対側で聞いて遊んでいる子どもをみて思いついたという説が濃厚です。日本には1848年にオランダ人医師Mohnikeによって伝えられました。当初は木筒であったのが徐々に改良がされて最近では音の増幅ができるデジタル聴診器も実用化されています。今後は遠隔医療への利用が期待されています。

聴診器で何がわかるか

 胸の聴診ではおもに心臓の鼓動と呼吸の音を聴いています。

① 心音
 心臓の中には4つの弁があります。弁が開閉するときに出る音が心音です。弁に異常があれば心音が強くなったり弱くなったりします。心臓や血管の中には血液が流れていますが、その流れに滞りや逆流があれば雑音として聞こえます。その他心臓の筋肉に異常があれば過剰な心音が聞こえたりします。心音の聴診は心臓弁膜症や先天性心疾患、心不全の発見に有用なツールと言えます。また心音のリズムの乱れは不整脈の存在を疑わせます。

② 呼吸音
 肺が空気を吸ったり吐いたりするときに聞こえるのが呼吸音です。気胸などで肺への空気の吸い込みが悪いと呼吸音が弱くなりますし、肺炎や肺水腫など肺に異物がたまっていると雑音が聞こえます。

聴診器の利点

 聴診器はスクリーニング手段としては有用ですが、確定診断に至りません。確定診断にはさらなる検査が必要となります。心臓の病気が疑われれば、心電図検査、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査へと進んでいきます。肺の病気が疑われれば、胸部X線検査が行われます。胸部CTやMRIは心臓にも肺にも有用です。

 では聴診器の最大の利点は何でしょうか。それは持ち運びが簡便であることと電気が不要であることだと思います。たとえば離島や山中など医療機関がないところでも医師がいれば使用できます。また大災害で停電中でも使用できます。確定診断がつかなくても病気がありそうかないか、医療機関への移送を急いだ方かよいか否かなどの判断の助けになります。

 今後も聴診器は医師に必須アイテムであると信じています。



(慶應義塾大学保健管理センター和井内 由充子  )