髄膜炎菌感染症
(Meningococcal infection)

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髄膜炎菌感染症とは

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)はヒトの鼻や咽頭などに定着する細菌で、日本では健康な人の0.4%が保菌していると報告されています。保菌しても発症しない人が多く存在します。髄膜炎菌は13種類の血清型に分類され、このうちの6種類(A、B、C、Y、X、W型)が髄膜炎菌感染症の原因となります。髄膜炎菌感染症は、健康保菌者や発症者が感染源となり、その咳やくしゃみを吸い込むことにより感染し(飛沫感染)、1-10日の潜伏期間の後に、髄膜炎や敗血症などを発症します。髄膜炎菌感染症は急速に重症化するのが特徴で、適切な治療を行っても約20%の患者に麻痺などの後遺症が残り、約10%の患者は致死的な経過をたどります。

髄膜炎菌感染症の疫学

髄膜炎菌感染症は、サハラ砂漠以南のアフリカ、いわゆる髄膜炎ベルトと呼ばれる地域で流行しており、年間3万人前後の患者が報告されています。一方、ヨーロッパにおける患者数は年間3000人で、米国からは年間300人超の患者が報告されています。これらの国における髄膜炎菌の健康保菌者は人口の10%程度と報告されています。一方、2016年に日本で報告された髄膜炎菌感染症患者は43人でした。髄膜炎菌感染症の患者の多くは乳幼児ですが、先進国では10代後半から20代前半の年齢層に患者が多いことが報告されています。この年代では、ペットボトルの回し飲み、食器類の共有、キス、寮などでの共同生活が髄膜炎菌感染のリスクとして考えられています。日本でも共同生活を行っている宮崎県の高校や神奈川県の学校における集団感染が報告されています。また、多くの人が集まるイベントに際して髄膜炎菌感染症が流行することがあり、イスラム教のメッカ巡礼、2015年に山口県で行われた世界スカウトジャンボリーでの集団感染が報告されています。

髄膜炎菌感染症の予防

髄膜炎菌感染症は、ワクチンによる予防が可能です。日本では4価髄膜炎菌ワクチンが2015年より使用可能になりました。4価髄膜炎菌ワクチンは、4種類(A、C、W、Y型)の髄膜炎菌に対する免疫を獲得することができ、接種の対象年齢は2歳~55歳です。欧米では、4価髄膜炎菌ワクチンに加えて髄膜炎菌B型に対するワクチンの接種が行われていますが、日本では承認されていません。寮などで共同生活を行う者ではワクチンの1回接種が、髄膜炎菌感染症にかかると重症化しやすい基礎疾患のある患者ではワクチンの2回接種が勧められます。また、海外の学校に留学する際には、髄膜炎菌ワクチンの接種を求められることがあります。髄膜炎菌ワクチンの接種が可能な医療機関については、厚生労働省検疫所ホームページ内の予防接種実施機関検索(https://www.forth.go.jp/moreinfo/vaccination.html?)や、日本渡航医学会ホームページ(http://jstah.umin.jp/02travelclinics/index.html)などを参考にしてください。



(慶應義塾大学保健管理センター 康井洋介 )