ネフローゼ症候群
(Nephrotic syndrome)

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ネフローゼ症候群とは?

腎臓の重要な機能のひとつに、血液中の老廃物や塩分をろ過して、尿として体の外に排出することがあります。このろ過機能でフィルターの役割を果たしているのが、「糸球体」と呼ばれる毛細血管の塊です。ネフローゼ症候群は、糸球体に障害が生じた結果、腎臓から大量の蛋白が尿に漏れ出て(蛋白尿)、血液中の蛋白(主にアルブミン)が減ってしまう状態です。成人では、蛋白尿が1日に3.5 g以上、かつ血液中のアルブミン濃度が3.0 g/dL以下を認める場合に、ネフローゼ症候群と診断されます。ネフローゼ症候群では、腎臓の機能障害を生じるだけでなく、浮腫(むくみ),脂質異常症(LDLコレステロール高値),血液凝固異常(血液が血管の中で固まってしまう血栓症)などのさまざまな異常を伴うことがあります。糸球体そのものに原因がある場合を一次性(原発性)ネフローゼ症候群、そのほかの疾患が原因となる場合を二次性(続発性)ネフローゼ症候群と呼んでいます。日本では年間に推定約5000人が、一次性ネフローゼ症候群と診断されています。

症状

ネフローゼ症候群では、間質と呼ばれる血管の外のスペースに水分が貯まるため、体重増加や浮腫をきたします。浮腫は、まぶたや足に自覚されることが多いですが、腸がむくむと食欲不振や下痢などの症状を伴うことがあります。また、体内での水分貯留の影響で、しばしば高血圧を認めます。蛋白尿そのものは、尿の色調などに影響しませんが、尿の表面張力が大きくなることで、尿の泡立ちを自覚することがあります。

治療・経過

二次性(続発性)の場合は、原因となる疾患の治療を優先します。一方、一次性(原発性)の場合は、原因疾患(微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症,膜性腎症など)によって治療方法が異なりますが、多くの場合は初期治療としてステロイドを投与します。また、補助的な治療として、高血圧を合併する場合にはレニン-アンジオテンシン系阻害薬という降圧薬を、浮腫が高度の場合には利尿薬を、血栓症を予防するためには抗凝固薬を、脂質異常症に対してはスタチン製剤というコレステロール低下薬を使用することが推奨されています。

治療の効きやすさ、再発のしやすさ、長期的な腎臓の機能低下(末期腎不全という状態になる)は、ネフローゼ症候群の原因によってまちまちです。原発性ネフローゼ症候群のうち、微小変化型ネフローゼ症候群は90%以上が初期治療のステロイドにより改善し、末期腎不全にはなりにくいと考えられていますが、巣状分節性硬化症では、治療により改善しないことや再発することがしばしばあります。



(慶應義塾大学保健管理センター 畔上達彦 )