成長曲線
(Growth Charts)

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 2016年、学校保健安全法施行規則の一部改正施行により、児童生徒等の学校健康診断における発育の評価に際して、成長曲線の活用が正式に推奨されました。成長曲線は、小児科の臨床現場では既に有用性が確立していますが、学校現場においても活用されることになりました。 

成長曲線とは

成長曲線は、成長指標を年齢の関数として表した成長評価における基本ツールです。通常、横軸に年齢、縦軸に成長指標、すなわち身長や体重などの身体計測値、あるいはbody mass index(BMI)などの身体評価指標をとります。

「標準成長曲線」と「個人の成長曲線」

 標準成長曲線」は、個人のデータの評価のために設定された基準曲線です。通常、国別(あるいは人種別)に多数の健常小児を基準集団として作成され、簡略化して「成長曲線」とも呼ばれます。標準成長曲線には、その基準線として、通常、標準線に加え、その上下に分布を示す線が描かれます。身長など集団データで正規分布を示す成長指標では、標準線は平均値、分布は標準偏差(SD)で示す線で表示できます。しかし、体重、BMIなど集団データで正規分布を示さない成長指標では、標準線は中央値(50パーセンタイル値)、分布はパーセンタイルで示す線で表示することが望ましいため、近年ではパーセンタイル表示の標準成長曲線が多く用いられます。また、標準成長曲線の基準線と基準線との間をチャネルといいます。
 一方で、「個人の成長曲線」は、標準成長曲線上に個人のデータを年齢に沿ってプロットすることで描かれます。データが複数あれば全体として「曲線」として捉えられるため、「個人の成長曲線」と呼ばれます。

成長曲線の活用による成長評価

低身長の評価を例として説明します。

1)現在のサイズの評価

 低身長」は、一般に同性同年齢健常小児の平均身長の‐2SD以下、あるいは3パーセンタイル以下の場合に判定します。この基準は、標準成長曲線の成り立ちを考えると、健常小児でも100人中2~3人は低身長と判定される可能性があることを示します(身長は正規分布する指標のため-2SD値≒2.3パーセンタイル値、3パーセンタイル値≒-1.9SD値と考えてよい)。したがって「低身長」=「疾患」と考えるのは誤りであり、現在のサイズの評価はあくまでもスクリーニングの位置づけで行う必要があります。

2)成長速度の評価

 身長は、適切な標準成長曲線を用いれば、健常小児において少なくとも1歳から思春期前までそれぞれ固有のパーセンタイル(あるいはSD)曲線に沿う成長を示します。このことから「成長速度の低下」は、一般に1年間の成長速度が同性同年齢の小児の-1.5SD以下である状態が2年以上続く場合に判定します。厳密には個人の身長計測値から算出した成長速度を標準成長速度曲線上にプロットすることで判定しますが、この方法はやや煩雑なため、多くは個人の身長計測値を標準成長曲線上にプロットし、曲線のカーブとの関係を見て判断します。すなわち身長増加が標準成長曲線のカーブに沿わずにシフトダウン(下方へ逸脱)する場合に「成長速度の低下」と判定します。標準成長曲線の2チャネル以上のシフトダウンを認める場合には明らかな成長速度の低下と考えるべきとされていますが、「成長速度の低下」の早期発見のためには1チャネル以上のシフトダウンでも注意をした方が安全です。なぜなら成長速度の低下がある場合、「低身長」でなくても内分泌疾患などの初期症状である可能性が高いからです。逆に成長速度の低下のない「低身長」児は、家族性低身長など病的でないものがほとんどです。
 一方、思春期年齢では健常小児においても、身長が標準成長曲線に沿わない成長を示すことが珍しくなく、成長速度の評価はやや困難です。標準成長曲線との比較では、思春期遅発傾向の児(思春期の成長スパートが相対的に遅い)では思春期年齢早期に、思春期早発傾向の児(思春期の成長スパートが相対的に早い)では思春期年齢後期に成長速度の低下を認め、専門医による疾患の鑑別を必要とする場合があります。



(慶應義塾大学保健管理センター 井ノ口美香子 )