禁煙しませんか

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喫煙と健康被害

タバコの煙の中には4000種類以上の化学物質が含まれていて、その少なくとも200種類以上は明らかに有害とされています。そのため喫煙者の大半は何らかの健康被害を被っています。タバコによって発生率が高められる疾患は喫煙関連疾患と呼ばれ、報告されているものだけでも、がん(喉頭、肺、口腔、咽頭、食道、膀胱、肝臓、膵臓、胃、大腸など)、動脈硬化による心臓病(心筋梗塞、狭心症など)や脳血管障害(くも膜下出血、脳梗塞など)、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患COPD、喘息、自然気胸など)、消化器疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)、口腔疾患(歯周病、歯牙の喪失など)、神経疾患(以前はボケ防止になるという説がありましたが、近年の研究では喫煙はアルツハイマー病のリスクを高めるほか、中年期からの記憶力や思考力低下の原因にもなると報告されています)、老化の促進(聴力・視力低下、皮膚のしわの増加や若年期からの白髪、毛髪の喪失、骨折、骨粗鬆症、腰痛など)、産婦人科疾患(男女とも性機能低下による不妊症のリスク増大、妊娠中の喫煙は早産や流産、妊娠合併症や先天奇形、低出生体重や周産期死亡、出生後も学習障害の発生率を高めると言われています)などがあり、さらに受動喫煙によって周囲の方の心臓病や肺がんになる可能性を高めたりすることもよく知られています。

依存症とその他の問題

喫煙のもう一つの問題点は習慣化すると簡単にやめられなくなるということです。これはタバコに含まれるニコチンが強い依存性を形成するためで、個人差はありますが人によっては麻薬に匹敵するほど強い依存状態になると言われています(ニコチン依存症については一般に治療適応がある疾患として公に認められ、2006年から治療費の一部が健康保険適応なりました)。このため好奇心や大人へのあこがれといった軽い気持ちで始めたのに、吸えば吸うほど依存性が高まり、やがて自分の意思と関係なく喫煙行動がニコチンに支配されることになります。これにともなう経済的な損失も少なくありません。一生の間にはタバコと関連用品代だけでも数百万円が煙となって消えます。またタバコの煙はタールと呼ばれる油の微粒子が主成分ですが、周囲に広く拡散して粘着し、皮膚や髪の毛の臭いの原因、衣類、車、住居、家具・家電の汚染による価値や機能の低下を招きます。健康被害の医療費や火災の危険が常に存在しますから経済的な損失は数千万円あるいはそれ以上になることもあり、ゆとりのある生活を送れるか否かは喫煙の有無が大きく影響すると言っても過言ではないでしょう。

世界的に見て、先進国においては公共施設の禁煙は常識であり、日本も健康増進法に基づいて公共施設における喫煙の制限が普及してきています。学校施設はもちろん、企業においても禁煙化が進んでいくと思われ、喫煙をしない、あるいは喫煙の習慣を早く断ち切ることが、将来の社会生活を快適にしていくことになるでしょう。

禁煙するには

禁煙方法にはさまざまなものがありますが、まずは禁煙に関心を持つことから始まります。喫煙関連疾患のこと、家族への影響、喫煙による損失、禁煙による利益などを思い浮かべることなどです。禁煙に挑戦する決意が固まったら具体的な準備をします。ニコチン依存度(FTQやFTDNで評価)が高いようであれば薬物療法の適応になる場合もありますので専門外来で相談するとよいでしょう。喫煙関連物品を処分し、周囲に宣言して、環境を整えます。禁煙を開始したら離脱症状を代償行動などで抑え、禁煙を開始した理由、自覚症状の改善、経済効果などを繰り返し意識して、「今日1日の禁煙」といった手近な目標を着実に達成することの繰り返しで、継続することが重要とされています。さらに、成功者の平均挑戦回数が3回と言われているように、あきらめず、粘り強く挑戦し続けることが成功の秘訣とされています。

喫煙率0%,Healthy University Keio2010をめざして

慶應義塾でも健康増進法の施行に伴い2003年4月からキャンパス内の分煙・歩行禁煙化が始まり、2004年1月大学病院内禁煙化、2006年12月信濃町キャンパス敷地内禁煙化、2009年12月芝共立キャンパス敷地内禁煙化と対策が進んできています。2010年4月より施行される「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」への対応も検討されています。保健管理センターでは,2001年10月から医師や保健師による禁煙支援,相談に取り組んでいます。ニコチンパッチなどの使い方,呼気一酸化炭素の測定や,依存度チェックなどを行うことが可能です。学生の喫煙率は,学部3年生で2000年では13.9%だったのが,2008年では10.6%,教職員は17.0%から11.6%に低下しています。喫煙率0%をめざして,今後も支援に取り組んでいきたいと思います。



(慶應義塾大学保健管理センター 森 正明・藤井 香)