熱中症の予防

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高温多湿のもとで、水分を十分摂らずに激しい運動を続けると、身体の水分や熱のバランスが崩れて熱中症が起こります。高温環境では、皮膚血管拡張による血流増加にともなう皮膚温度の上昇や、発汗およびその蒸発による気化熱として、身体からの放熱量を増すことによって体温は一定に保たれますが、熱中症はこれらの体温調節機構の不具合によって起こる身体障害です。熱中症は、正しい知識があれば確実に予防が可能ですが、万一の場合に備えて応急処置法を知っておくことも必要です。


【熱中症の種類】

  1. 熱けいれん:大量の発汗後に水のみを補給した場合に、血液の塩分濃度が低下して手足や腹筋に痛みをともなうけいれんが起こります。
  2. 熱疲労:大量の発汗による脱水により、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状を認めます。体温の上昇は顕著ではありません。
  3. 熱射病(重症):激しい運動、高い気温、脱水などにより体温調節ができなくなり、体温の異常上昇と意識障害をきたします。意識障害の程度は、軽度の応答が鈍い、言動がおかしいなどから、重度の昏睡まで様々です。多臓器障害を合併し死亡率が高い病気です。

【熱中症の予防】

  1. 気温だけでなく湿度にも注意する:熱中症は気温が30℃以下でも湿度が高い場合には発生します。高湿度の環境では、汗が蒸発しにくいため体温を下げることができずに熱中症の危険が高くなります。気温30℃湿度80%以上では運動は原則中止、気温30℃湿度30%以上、または気温が26℃でも湿度が60%以上ある場合には激しい運動を避けることが必要です。
  2. こまめに水分を補給する:発汗量に見合った十分な水分を補給してください(30分に1回、50~100cc程度)。汗には塩分も含まれているため、ミネラルを含むスポーツドリンクによる補給が理想的です。
  3. 暑さに慣らす:熱中症は、急に暑くなった日、合宿の初日、試験休み後、新入部員など、暑さに慣れていない場合に多く発生します。準備運動をよく行い、暑さに徐々に慣らしてください。
  4. 吸湿性・通気性のよい服装や帽子の着用:吸湿性、通気性のよい服装を選び、帽子によって直射日光を避けます。防具を着用するスポーツでは、休憩中にははずして熱を逃がしてください。
  5. 暑さに弱い人は特に注意する:熱中症の発生には個人差が大きく関係します。肥満傾向の人、体力の弱い人、暑さに慣れていない人、熱中症の既往のある人は、特に注意が必要です。また体調不良時(疲労、発熱、下痢など)は、体温調節能力が低下し熱中症を起こしやすく注意が必要です。

【熱中症の応急処置】

涼しい場所で、頭を低く足を高くして寝かせ、スポーツドリンクや薄い食塩水などミネラルを含んだ水分を補給します。吐き気などで水分が摂れない場合や、ふらつく、突然座り込む、応答が鈍い、言動が不自然、もうろうとしているなど、少しでも意識障害が疑われる場合には、病院へ搬送し緊急で治療を受けることが必要です。すぐに救急車を要請し、救急車到着までの間、積極的に身体を冷やします。衣服を脱がせ、水をかけたり濡れタオルをあてて扇ぎ、頸部、脇の下、足の付け根などの太い血管のある場所を氷やアイスバッグで冷却します。また血流をよくするために、手足の先から身体の中心に向かってマッサージをします。出来るだけ速く体温を下げる事が、救命率上昇につながります。また、熱中症を起こした場合は、たとえ休養や水分補給で症状が改善しても、運動は中止し慎重に経過観察することが必要です。



(慶應義塾大学保健管理センター 德村 光昭)